ああ、なんということであろうか。まさかあんな存在に出会おうとは。
私はあんなものが生まれうるなどとは思ってもみなかったし、誓って言うが、
生まれて欲しいとすら思ったことはない。
あれは、一体なんなのだろう。あの、叩いても叩いても、まるで何も無かったかのように蘇るあれは。
あれは、一体なんなのだろう。こちらの忠告が、指導が、懇願が。攻撃すらも全く通じないあれは。
あれは、ほんとうに一体全体、なんなのだろうか。
簡単な普遍的事実として、SS国家というのは、SS、もしくはFF。または絵で出来ている。
当然ながら、AAはそこに含まれない。
しかし、あれは平然とSSに混ぜてみせた。
自分の領土を切り開いた時。それを著名な国家で公布するのは良い。しかし、それは一度で十分なはずだ。
しかし、あれは何度でもやってのけた。
しかも、追放に限りなく近い形で追い出され、仕方なく作った領土をだ。
批難が巻き起こり、暴動の恐れまであるので、その名での行動を禁じる。
そう命じられたら、普通の人間ならば、その国には二度と足を踏み入れないはずだ。
しかし、あれは名を変えて、しかし顔を変えず、簡単な変装すらもせずに、平然と足を踏み入れてみせた。
あれは、一体なんなのだろう。
あれは、一体なんなのだろう。
あれは、一体なんなのだろう。
私は恐ろしい。あれが、あれが、もうそこまでやって来ている。
ブログヲツクリマシタ。という、あれの鳴き声が聞こえてくる。
ああ、今、もう固く閉めてあったはずの扉を開けて……
――ある理想郷国住人の手記より抜粋――
友人が失踪して早数ヶ月……私大教授の落合は、ある日ポストに投函された手紙に気付く。
差出人は越智、行方不明の親友からだった。
逸る心を抑えて手紙を読む落合。
そこには、震える筆跡でこう書かれていた。
「『名を秘すもの』に気をつけろ。生贄の羊が」
……文章は、途中で途切れていた。
その日から、落合は身辺をつけ回す何かの存在に気付いてしまった。
果たしてそれは、人間なのか? それとも、親友の言う「名を秘すもの」なのか……?
こうして、彼の心の休まることない日々が始まったのだった……。
(これはフィクションです。現実の人間・場所・事件等とは一切関係ありません)